おはようございます。
21 世紀ももうすぐ四半世紀がすぎようとしています。20 世紀に爆発的な進歩を遂げた科学技術は、今後ますますの発展が予想されています。とくに生物化学や情報通信技術の進歩は予想が難しく、人間と社会に大きな影響を及ぼすことは疑いがありません。この度、その影響が「明」となるか「暗」となるかについて、世界的歴史学者による示唆に富んだ書籍を読む機会を得ました。非常にボリュームのある書籍だったため要点をおさえられているかはわかりませんが、記事にまとめたいと思います。
本日は、書籍『21 Lessons 21 世紀の人類のための 21 の思考』(著者:ユヴァル・ノア・ハラリさん)の要約・感想記事です。
世界的歴史学者・哲学者からのメッセージに触れましょう
現代の「知の巨人」による提言『21 lessons』
記事の内容は、以下の通りです。
- 本書の概要と、著者について紹介
- テクノロジー面の課題。データを制する者が世界を制する。
- 政治面の課題。グローバルな課題は、グローバルな対応が必要。
それぞれの内容についてみていきます。
本書の概要と、著者について紹介
本書の概要です。
私たちはどこにいるのか。そして、どう生きるべきか――。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』で全世界に衝撃をあたえた新たなる知の巨人による、人類の「現在」を考えるための 21 の問い。
著作累計世界 2000 万部突破のユヴァル・ノア・ハラリ最新刊、待望の発売!
河出書房新社 商品紹介ページ( https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309227887/ )より引用
『サピエンス全史』で人類の「過去」を、
『ホモ・デウス』で人類の「未来」を描き、
世界に衝撃をあたえた新たなる知の巨人が、
第 3 作『21 Lessons』では、ついに人類の「現在」を問う――。
いま、何が起きているのか―?
そして、あなたはどう生きるか―?
著者であるユヴァル・ノア・ハラリさんは 1976 年生まれのイスラエル人で、歴史学者です。ヘブライ大学歴史学部の教授である一方で、『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』などの書籍の著者としても知られています。その影響力は強く、現代における知の巨人としてコロナウイルス感染症に対する提言や、ロシアのウクライナ侵攻に対する寄稿が話題となりました。
本書では 21 世紀の人類が直面している重大な問題と、それらの展開について概観しています。いずれも複雑すぎて理解は難しい課題ばかりです。しかし本書では、それらの課題が著者のウィットとユーモアにあふれる文章により、わかりやすく記されていました。そして、本書を読み終えた「あなた」が、これらの問題を抱える現代でどう生きていくのか?という問いを投げかけているように感じました。
「現在」を知り、「未来」を考えるために、「過去」の歴史を知ることが重要です
テクノロジー面の課題。データを制する者が世界を制する。
まず著者が述べていたのは、テクノロジー面の課題です。
テクノロジーの進歩はめざましく、最近では chatGPT などに代表される人工知能(artificial intelligence:AI)の発達は日々のニュースを飾っています。その他にも、自動車の自動運転技術や病気の画像診断技術など、テクノロジーや AI はまさに日進月歩の時代です。AI の活用は私たちの生活を便利にしてくれる一方、AI 開発の世界的権威ら 350 人以上が「AI による様々なリスク軽減は世界的優先課題である」という声明に署名したことも話題となりました。
AI 技術の発達に対しては、ハラリさんも警鐘を鳴らしている一人です。本書では AI が人類に及ぼす影響について、雇用・自由・平等という観点から述べていました。
<雇用> 大人になったときは、仕事がないかもしれない
先に述べた自動運転システムや画像診断システムにより、運転手や画像診断医師の仕事が AI に取って代わられる可能性があります。また、仕事内容がマニュアル化しやすい、いわゆるホワイトカラーの職業も代わられるものの 1 つです。これらの結果、新しい「無用者層」という階級が増大し、社会は高い失業率に頭を悩ませることもありえるとハラリさんは説いています。また、現在は人間の独壇場である対人ケアの仕事(介護など)も、長期的にはどうなるかわかりません。2050 年には、テクノロジーの進歩により「一生の仕事」という考え方も怪しくなるそうです。
<自由> 自由すら、データに基づくように?
人間の感情は、何にも管理されない自由や直感に基づくと思われていましたが、ハラリさんは、感情は計算(生存と繁殖の可能性が高くなるように)に基づいていると説きます。しかし多くの人はこの事実に気づきそこなうようです。
そして、計算といえばコンピュータが最も得意とする分野です。現時点ですら、生体情報(脈拍や脈波、表情や瞳孔の開き具合など様々)から感情やストレスを読み解くテクノロジーはある程度実用されています。一部の企業では、それらを従業員の体調管理に活用しているようです。今後、人間から生体情報をキャッチする生体センサーとその情報を解析するコンピュータ技術は指数関数的に進歩を続けると思われます。近い将来、アルゴリズムに基づいた感情分析→その時の感情に基づいた最適な判断はすべてコンピュータにおまかせ、という時代が間違いなくやってくるでしょう。
<平等> データを制するものが世界を制する?
このパートでは、バイオテクノロジーの進歩により、経済的不平等が生物学的不平等につながる可能性があると主張されていました。
美や健康、長寿などは人類普遍の願望であり、研究が盛んな分野でもあります。それらで得られた成果の恩恵を十分に受けるには、おそらくお金が必要になるでしょう。富裕層が美や健康、長寿だけでなく、身体機能や認知機能、クリエイティビティなどの能力をお金で買う。その結果、超人化する富裕層 / それができない一般人という分断がおこる可能性があるようです。漫画『テラフォーマーズ』のジョセフ・G・ニュートンのような「人類の到達点」が現実に生まれるかもしれません。
今でさえ世界の富の半分は、人類の 1% が保有しています。残念ながら、上記のような流れを背景として、21 世紀にさらなる不平等の解消を期待することは難しいようです。。
正直に申し上げると、序盤は課題の指摘が多く読み進めるのにパワーが必要でした
グローバルな課題は、グローバルな対応が必要。
ハラリさんによる課題の指摘はまだ続きます。テクノロジーの次は、政治に関する指摘です。
21 世紀の人類が直面する課題は、地球温暖化や生物多様性の保護、移民、テクノロジーによる破壊的技術など、グローバルな規模となります。いずれも単一国家での対応は難しく、これらの課題解決に向け、人類は単一の共同体として同調する必要性があります。
しかし、近年の世界の動向に目を向けてみると、2016 年のトランプ氏の大統領(当時)当選とそれによる「アメリカ・ファースト(孤立主義)」政策の推進、イギリスの EU 離脱(実行は 2020 年)、ロシアのウクライナ侵攻、中国の台湾に対する軍事圧力増強など、世界各国が足並みをそろえて課題に立ち向かおう!という気配はあまり感じられず、ナショナリズムによる孤立が目立つという主張が述べられています(アメリカは 2020 年にバイデン氏の大統領当選によって、国際協調路線への復帰が感じられますが)。
グローバルな課題に対する唯一の現実的な策は、政治をグローバルにすることだけです。先日行われた G7 広島会議の成果をまとめた首脳宣言では、ウクライナに対する支援や「グローバルサウス」との関係強化が盛り込まれていました。これらがパフォーマンスで終わらず、確実な成果として現れることを期待したいですね。
グローバルな課題はグローバルな規模で対応。当たり前かもしれませんが腑に落ちました
まとめ
本書では多くの問題が扱われています。とらえ方は人ぞれぞれですが、世界有識者の考え方に触れてみることは悪くないでしょう。
本日は、書籍『21 Lessons 』より、
・本書の概要と著者について紹介。ユヴァル・ノア・ハラリさんは現代における「知の巨人」の一人。
・テクノロジーの進歩は、私たちの仕事、自由、平等を脅かす?
・21 世紀の課題はグローバル。対策は、政治をグローバル化すること。
上記 3 点について、私なりに要約・感想を記しました。
21 世紀の人類がどのようになるかなんて私が考える必要はないと思います。ただ、指摘されている課題はどれも私たち一人ひとりの生活に無関係とはいえません。また、今まで考えたこともなかった内容だけに、貴重な読書経験となりました。
本を読む習慣がなければ、今回のような「現代の知の巨人」の考え方に触れる機会もなかったと思います。やはり読書の習慣は大切ですね。いち理学療法士の人生に、なんらかの幅をもたらしてくれていると感じます。
本書が私にとって初めてのハラリさんの書籍でした。これを機に、既刊書籍も読んでみたいと思います。
ぜひ手に取ってみてください
【オススメ書籍の紹介】
『地球の未来のため僕が決断したこと』
ビル・ゲイツさんが考える地球温暖化の現状と対策です。
こちらの書籍でも、必要なことは世界の合意であると説かれてます。
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