老化防止科学の現在地『SuperAgers スーパーエイジャー 老化は治療できる』

書籍感想

おはようございます。

いつまでも若々しくありたいと多くの人が思っていますよね。
アニメや小説の若返り薬のように、飲むだけで老化を治療できたら…なんて夢のようです。
しかし、そんなことを夢見る時代は終わりを迎えているのかもしれません。
医学の進歩は目覚ましく、その老化が治療対象となるかもしれない。
そんな現在地を示してくれた書籍を取り上げたいと思います。

本日は、『SuperAgers スーパーエイジャー 老化は治療できる』という書籍の要約・感想記事です。

本書を読み、老化について考えてみましょう。

老化防止科学の現在地『SuperAgers スーパーエイジャー 老化は治療できる』

記事の内容は、以下の通りです。

1.健康長寿は遺伝が強く影響
2.老化を治療?老化はあらゆる慢性疾患の原因
3.メトホルミンは老化治療の主役となるか?現在進行中の研究

それぞれの内容についてみていきます。

健康長寿は遺伝が強く影響

タイトルにもある Super Agers とは、同世代と比べ高い認知・身体能力を持つ高齢者のことです。
定義は様々ですが、おおよそ 70 歳以上の健康的な高齢者を指すことが多いようです。

本書ではセンテナリアン(centenarian:100 歳以上の方)を対象とした著者の研究結果をもとに、長寿の要因が解説されていました。

その結果によると
・長寿の方々は必ずしも健康的なライフスタイルではない
・いくつかの細胞遺伝子に変異がみられる人が多い
ということが明らかになっているようです。

ライフスタイルについては、調査対象となった方のうち
・半数の人は肥満で運動習慣がない
・男性 60%、女性 30% の人が喫煙習慣あり
・20% の人が毎日飲酒している。また、カロリー制限を実践している人は 20% のみ
ということのようです。

健康的なライフスタイルなんて関係ない?

そう感じるかもしれません。
しかしこの方々は、「生き残っている人たち」です。

生き残った人たちは、これらの悪影響から身を守る遺伝の影響が強かった可能性があります。
不良なライフスタイルの方は、おそらく 100 歳を超える前に亡くなっている可能性が高いでしょう。
つまり、これらの結果を根拠とし、生活習慣を乱しても大丈夫!とはなりませんので気をつけましょう。

不良なライフスタイルと疾病発症・健康寿命短縮の関連は明らかです!

老化を治療?老化はあらゆる慢性疾患の原因

がんやアルツハイマー病、慢性腎臓病などに代表される疾患は加齢関連疾患と呼ばれます。
これらの疾患の共通かつ最大の危険因子は「老化」です。
そのため、老化そのものを治療することができれば、複数の疾患分野に恩恵があります。
また、老化の治療は病気にかかるリスクそのものを下げることにもなります。

これらを背景として、著者は老化治療の必要性を強く主張しています。

個人的には、数多くの疾患の主要な危険因子は老化→だから治療が必要、というロジックはすっきりしていて納得できました。

ある特定の病気を治療するよりも効率的ですね

メトホルミンは老化治療の主役となるか?現在進行中の研究

老化を治療する薬は、世界中で開発が進んでいます。
その中の 1 つにメトホルミンという既存のクスリがあります。

メトホルミンのアンチエイジング効果については、本書でもボリュームを割いて紹介されていました。

メトホルミン(日本の商品名はメトグルコ)は糖尿病治療で 60 年以上使用されている薬剤です。
メトホルミンは肝臓で作用し、糖を分解します。その結果、糖が体内にめぐることを防ぎます。
また腸管における糖の吸収も抑える効果もあり、血糖値の上昇を防ぎます。
加えて、安価で低血糖の副作用も起こしにくく、体重減少も期待できるため、現時点で糖尿病治療薬のファーストチョイスとなっています。

そのメトホルミンですが、近年では心臓病や認知症、がんなどの発症リスクを低下させるという結果が報告されるようになりました。
これら疾患の共通リスクは老化であるため、メトホルミンは老化そのものに効く!?と考えられています。
そして、このメトホルミンによる老化防止効果の検証を目的としたTAME(Targeting Aging with Metformin)研究が、著者らを中心として予定されています。
調べた限りだと、コロナウイルス感染症の影響のためまだ調査は開始されていないようです。

ここにもコロナの影響があるんですね。。

なお、メトホルミンはお薬です。
医師の処方なしに服用はしないでください。

まとめ

老化は仕方ない…という認識を改める時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。

本記事では、
・健康長寿には遺伝が強く影響していること
・老化はあらゆる慢性疾患の原因であり、それ自体が治療対象になりうること
・老化治療の候補として、メトホルミンの効果が期待されていること
上記について、私なりに要約・感想を記しました。

老化そのものを治療対象とする時代が来ているなんて、本書や著書『LIFE SPAN』を読むまでは全く知りませんでした。
せいぜい、ボールを七つ集めて巨大なドラゴンに頼むくらいしか思いつきません。
医学の進歩には驚かされるばかりです。
個人的には、TAME 研究の進捗や結果のチェックを定期的にしたいと思いました。

本書では老化研究の現在地と将来展望について詳細に記載してありました。
本記事では触れませんでしたが、老化におけるコレステロールや成長ホルモンの役割なども詳細に述べられており、興味深く読むことができました。

また、我々でも実践できる生活習慣(運動、食事、睡眠)についても提言がありました。
これらは特に変わった点はなく、運動をする、ほどほどに食べる、よく眠るなどの記載でした。
この点を深く学ぶのであれば、それぞれ専門の書籍を読むことをオススメします。

本書は、「仕方ない」という老化という概念を変えてくれる可能性があります。
老化治療は、近い将来実現する可能性が高いと思います。
それに、需要が多ければビジネスチャンスもあるかもしれません。
また、人間誰しも年齢を重ねますので、そういう意味でも知っておいて損はない内容だと思いました。

ぜひ手に取ってみてください。

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老化治療について興味を持たれたら、こちらの書籍もオススメです。

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