おはようございます。
私自身、ビジネス書や健康本・金融本などを手にすることが多いですが、たまに息抜きとして小説も読んでいます。
もっとも小説以外の本を読むようになったのはここ 1 年で、学生の頃は小説ばかり読んでいました。
今回遅ればせながら、 2016 年に刊行され、第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞をダブル受賞した作品を読むことができましたので、取り上げたいと思います。
本記事は、小説『蜜蜂と遠雷』(著者:恩田陸さん)の感想記事です。
2019 年に実写化もされた作品です。
『蜜蜂と遠雷』
記事の内容は、以下の通りです。
1.ピアノコンクールという一般人では知りようのない世界を楽しむ
2.個性豊かな登場人物たち
3.演奏部分の描写は圧倒!文字から映像・音楽を感じる楽しさ
それぞれの内容についてみていきます。
ピアノコンクールという一般人では知りようのない世界を楽しむ
タイトルからは想像もつきませんでしたが、本作はピアノコンクールとその出場者 4 人を描いた作品です。
私自身はピアノと縁のない人生でしたので、ピアニストが歩む道や、コンクールがどのように展開されていくかなど、題材に関する詳細は全く分かりませんでした。
また、作中にも述べられていましたがコンクールで受賞を目指すようなレベルの方は、ピアノに専念した生活を送れる=多くの場合、経済的に裕福な方々だそうです。
つまり、私のような一般人ではまず知りえない世界です。
そんな世界を題材にした作品ですから、読んでいてもさっぱり分からない。
となりがちですが、恩田さんのさすがの文章力・表現力のおかげで、見事に作中の世界に引き込まれました。
未知の分野を知る、という楽しみを味わえました
個性豊かな登場人物たち
本作はコンクールに出場する 4 人のピアニストを描いた作品なのですが、いずれの人物も魅力的で素敵でした。
出版社ホームページおよび映画.com の作品ページの掲載情報の範囲で触れてみます。
風間塵(16歳)
『養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年。
先ごろ亡くなった世界最高峰のピアニストからの「推薦状」を持っており、そのすさまじい演奏で見る者すべてを圧倒していく。』
まず名前、ですよね。塵=ほこり・ダストです。
彼の登場・演奏が出場者や審査員など多くの人物の価値観を揺り動かし、そして変えていきます。
物語の主人公(と私は理解しています)です。
栄伝亜夜(20歳)
『かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった。』
まず名前、ですよね。
インパクトが強すぎます。
作中で見せる覚醒の様は圧巻でした。
主人公は風間塵だと思いますが、本作は彼女の変化の様子が強く描かれていた気がします。
高島明石(28歳)
『音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリ。家族の応援を背に最後の挑戦に臨む。』
個人的には一番共感できた人物でした。
というか、私のような一般人ではバックグラウンドからして彼しか親近感を抱けないと思いますが。
ピアノを続けることに対する葛藤はとてもよく分かりましたし、結果の部分ではとてもハラハラしながら読みました。
マサル・C・レヴィ=アナトール(19歳)
『名門ジュリアード音楽院在籍中で完璧な演奏技術と感性を併せ持つ。コンクールの優勝候補として注目されている』
イケメンでスタイルもよく、スバ抜けた演奏技術も持ち合わせる…天は二物・三物を彼に与えました。
過去のエピソードや師匠との関係性も興味深かったです。
この 4 人の人間模様がピアノコンクールを舞台として描かれています。
記事を書いているだけでまたワクワクしてきました
演奏部分の描写は圧倒!文字から映像・音楽を感じる楽しさ
そして圧巻だったのは、なんといっても演奏箇所の描写です。
(おそらく)疾走感の溢れる曲についての描写は、文章も小気味よく展開され、読んでいてリズムが生まれ来ました。
また、(おそらく)スケールの大きい曲についての描写は、大きな空間や宇宙を想像させるような読み応えのあるものとなっていました。
(私のつたない文章力ではうまく表現できませんが)
私はクラシック音楽については無知です。
作中で演奏される曲が実際にどのような作品なのか皆目見当もつきませんでした。
しかし、素人なりに上記のような楽しさを感じることができました。
このあたりは、本作を読んで感じていただくしかありません。
また、文章を読み出演者たちがピアノを弾いている姿を想像して楽しむこともできました。
セルフ実写化です。
個人的には、これが小説を読む醍醐味だと感じています。
恩田さんの文章力に脱帽です!
まとめ
文章を読み、頭の中に映像を起こし、音楽を奏でる。
こんな非日常体験を楽しむことができました。
本記事は、小説『蜜蜂と遠雷』より、
・ピアノ演奏という未知の世界
・個性豊かな登場人物 4 人
・圧倒的な文章力で本の中の音楽を楽しむ
上記 3 点について、本の概要紹介と個人的に楽しめた部分をまとめました。
恥ずかしながら、本作が複数の賞を受賞していることや実写映画化されているということを、本記事を執筆する際に知りました。
個人的には、実写版を見る前に小説を読めてよかったと思っています。
「このキャラは実写化するなら○○だな」とか、「どんな表情でこのセリフ言ったかな」など、小説を読んで妄想の世界にひたるという楽しみは、小説派にしか味わえない楽しみだと思っているからです。
(もちろん、実写化を否定する意図は毛頭ありません)
大変楽しい作品に出合うことができました。
もし小説版・実写版どちらもご存知のない方は、小説版を先に読むことをオススメします。
脳内でセルフ実写化を楽しんでください。
映画を見るのは、それからでも遅くないですよ。
ぜひ手に取ってみてください。
文庫版はこちらです
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