『日本一シンプルな相続対策』要約 家族信託で親の認知症に備えよう

家族信託 書籍感想

おはようございます。

「認知症になると財産が凍結されるって聞いたけど、なにか対策はあるのかな」
「親も年をとってきたし、的確な判断ができるうちに実家の管理や施設入所について話し合わないと」

このように親の認知症と資産管理、あるいは老後の対応について疑問に感じたり考えることはないでしょうか。

「まだない」という方もいらっしゃると思いますが、誰にでもいずれ「その時」がやってくると思われます。

まだ親御さん(読んでくれている方がご年配の方であればご自身)が健在で認知症の症状がないのであれば、上記のような生前の資産管理、あるいは相続に関する疑問 / 悩みに対しては、本書で学べる内容が解決のヒントになるかもしれません。

なぜなら、本書には親の認知症対策・資産承継対策として最上位の効果と確実性がある「家族信託」という方法について分かりやすく解説してあるからです。

本記事では書籍の内容を中心に、

  • 認知症 = 法的な死であり、資産凍結の憂き目にあうことも
  • 家族信託で資産凍結を回避し、相続をシンプルにする
  • 家族信託の進め方 最安 6 万円コース

上記 3 点についてまとめたいと思います。

本記事を読むことにより、家族信託という制度の概要とその有用性について知っていただけると思います。また、紹介する書籍にも興味を持っていただけると思います。

相続「税」対策はお金持ちの課題ですが、相続対策は一般家庭にも必要です。有効な対策を学びましょう。

本日は書籍『日本一シンプルな相続対策 – 認知症になる前にやっておくべきカンタン手続き -』(著者:牧口晴一さん)の要約・感想記事です。

本書を読み、シンプル相続対策について学んでみましょう

『日本一シンプルな相続対策』要約 家族信託で親の認知症に備えよう

親が健在なら今のうちに手を打とう

本書は、

  • 手続きの連続である相続をなるべくシンプルにすること
  • 亡くなる前に起こり得るお金の問題(認知症による資産凍結)

この 2 つの問題に対して「家族信託」という方法で対策することを提案している書籍です。

まずは、認知症になると資産管理についてどんな問題があるのかを紹介していきます。

認知症 = 法的な死 財産は凍結

認知症になり、本人に適切な判断や意思表示の能力がなくなった場合、「生きているが自分自身の意思で法的な手続きや契約ができない状態」になります。これを本書では「法的な死」と表現していました。

もしこのことが金融機関に知られると、本人名義の預金口座は凍結され、使用できなくなります。

年金も引き出せなくなり、生活費も子が工面することに

法的な死になると銀行口座は凍結され、たとえ同居の家族であっても預金を引き出すことができなくなります。

そうなると、親が生きている間の生活費は子どもが工面しなくてはならなくなります。親の生活費は年金を頼りにしたいところですが、年金は本人名義の口座にしか振り込まれないため、口座が凍結されていたら使えません。

土地・建物の売買ができなくなり維持の費用と手間がかかる

法的な死になると、本人名義の財産(土地や建物)の売買もできなくなります。

これらの資産は処分できないだけならともかく、毎年の固定資産税や火災保険料がかかることに加え、草が伸びたら除草、動物が出たらその対処が必要です。また、定期的なメンテナンスのためにガス・水道・電気も止めるわけにもいきません。

いわゆる「負」動産になってしまう可能性も、十分にあります。

法的な死になる確率は決して低くない

法的な死は、運の悪い一部の人だけに降りかかる未来ではありません。というのも、日本の認知症の発症割合はこれまで右肩上がりで増えており、そしてこの傾向は将来も続くと予想されているからです。

厚生労働省の調査によると 65 歳の人口に占める認知症の方の割合は、2025 年に 20% を、2060 年には 33% を超えると試算されています。

つまり、預金や資産の管理ができなくなるという大きなリスクが、どの家庭にもそれなりに高い確率で襲いかかってくるということです。

火災よりも起きる確率が高い資産凍結に対策しよう

ここまで紹介したように、法的な死(= 認知症)となり資産凍結の憂き目にあい、両親が生きている間の生活費・介護費の資金難におちいる可能性は、決して低くありません。

家が火事になる生涯確率は 4.82% というデータがありますが、私たちはそれに対して火災保険で備えています。

しかし、それよりも可能性が高い法的な死と、それによって起こる悲劇に対してはほとんどの方が対策していません。

そんな問題に対して、ここから紹介する「家族信託」が有効な解決策になるかもしれません。

3-5 人に 1 人が認知症になる時代が来ます!備えたほうがよさそうですね

家族信託で資産凍結に備え、さらにシンプル相続へとつなげる

家族信託という制度をご存知でしょうか。

家族信託はまだ十分に普及しているとは言えない制度ですが、親が健在のうちにこの手続きを進めることができれば、生前に起こり得る問題(認知症による資産凍結)だけでなく、死後に起こり得る問題(相続トラブル)に対しても最上位といえるほどの対策となります。

ここでは、家族信託の概要とメリットについて紹介していきます。

資産の名義だけ付け替える

家族信託を一言で表すと、資産の名義だけを付け替える制度です。これにより、親の資産を子が管理・売買できるようになります。

家族信託は、資産の管理を委託する人(委任者:親)と任される人(受託者:子)との間で信託契約を結ぶことで実現します。

子に資産を信託すると、その利益も子のものになる?

そんなことはありません。親は委託者と同時に受益者になることができます

家族信託では委託者が受益者(株式・債権や不動産などの資産から生じた利益を受け取る人)を兼ねることができます。

つまり、家族信託契約を結んだあとでも親は資産からの利益を受けることができます。さらに、親自身がまだ健在である場合は、委託した資産が適切に管理されているかをチェックすることもできるのです。

生前〜死後の財産管理をスムーズにする

家族信託は親の生前から死後にかけての財産管理をスムーズにし、親の「子に迷惑をかけたくない」という想いを実現する方法です。

というのも、家族信託はその契約のために「親名義の財産明細」が必要になるからです。さらに、家族信託のなかの遺言信託を利用することで、その内容を実質的な遺言にすることもできます。

親名義の財産明細をつくることで「どこに、なにが、とれだけあるか」が明らかになる

家族信託は契約までのステップで、親名義の資産の明細が必要になります。これにより、相続のときに最大の問題点となる「親の資産はどこに、なにが、どれだけあるのか分からない」の大部分を回避することができます。

これが本書のタイトルにある「シンプル相続」を実現するための第一歩になります。

実質的な遺言にすることもできる

実は家族信託は「契約信託」と「遺言信託」に分けることができます。このうち、契約信託はここまで紹介したように親の認知症対策として生前の財産管理が主たる目的です。

その一方、遺言信託は「遺言」の中で家族信託を設定します。

どういうことかというと、たとえば遺産の受取人に代わって資産管理をする必要がある場合(受取人が認知症発症のリスクがある高齢の配偶者であるときや、障害をもつ子のときなど)、受け取り人に替わって財産管理する人やその仕組みを残すことが必要でしょう。

そんなときはぜひこの制度を活用するとよいそうです。

  • 親の認知症対策には信託契約。
  • 親の財産とその管理の仕組みを相続人・受遺者に遺すのであれば遺言信託

このように、信託契約と遺言信託を目的によって使い分けることが、資産管理や相続をシンプルにするカギになりそうです。

成年後見制度はアリ地獄

親の判断能力が低下したときの財産管理方法として、家族信託の他に「成年後見制度」があります。家族信託よりも耳にすることが多いと思われる制度ですが、成年後見制度は著者いわく「アリ地獄」なのだそうです。

ランニングコストが高い

成年後見制度も家族信託も専門家による手続きが必要であり、初期費用は成年後見制度でおおよそ 50 万円、家族信託では 30-100 万円かかります。

一見すると家族信託の方が費用がかかるように感じます。しかし、成年後見制度では、さらに月々の必要経費として 3-6 万円ほど必要になります。しかも、その期間は本人が亡くなるまでです。

厚生労働省が発表している平均寿命と健康寿命の差(なんらかの介護が必要な期間)は男性が約 8 年、女性が約 12 年です。あくまで試算ですが、仮に介護期間を 10 年と見積もると、その期間中のランニングコストは 3-6 万円 × 12 か月 × 10 年 = 360-720 万円となります。

その一方で、家族信託に必要なのは初期費用のみです。トータルで考えると、結果的には家族信託の方が安く済む可能性が高いでしょう。

意図した通りに資産を使えないかもしれない

成年後見制度は契約者本人を徹底して守る制度です。つまり、本人名義の財産は極力減らないように管理されます。

そのため、資産の売却や預金の引き出しは必要最低限に制限されることもあるようで、子の介護負担を少なくするために必要なプラス・アルファの支出は認められないこともあるようです。

つまり、成年後見制度は家族信託よりもトータルでみたコストは高くつくわりに、子が親の資産を意図した形で管理できるかは怪しい制度であると言えそうです。著者はこれらのことから成年後見制度はアリ地獄と表現していました。

このようにまとめてみると、家族信託は生前からの親の資産管理に関して優れた制度だということがわかります。

では、手続きをどのように進めていけばいいのでしょうか

家族信託を進める手順

ここからは、家族信託を進める手順を紹介していきます。本書では「すべて自分でやる場合の最安 6 万円コース」が紹介されていました。

本記事ではその概要をまとめたいと思います。

まずは家族会議

なによりもまず取り組むことは家族会議です。どの資産を、誰に、どんな目的で信託するのかを話し合っておきましょう。

一般的な家庭であれば、信託する資産は実家とその土地、さらに多めの現金(信託する不動産の管理費と入居見込みの老人ホーム入居一時金)とすることが無難だそうです。

公証役場へ行き、契約書を作成

契約内容がおおむねまとまったら、公証役場で契約書を作成してもらいましょう。公証役場は各都道府県ごとに数か所あります。

書類の作成には手数料が数万円必要ですが、書類完成までの相談料は無料であることが多いそうです。このときに「認知症対策の家族信託で、贈与税がかからないようにしたい」と希望を伝えるのがポイントです。

法務局で登記する

信託財産に不動産が含まれるときには登記が必要です。所有権移転登記(不動産の登記名義を移転する登記)と信託登記(信託契約の内容を登録する登記)のために、平日 2-3 回法務局に足を運びましょう。

このとき、法務局へ行くのは親と一緒でなくても構わないようです。

信託用の銀行口座を開設

最後のステップは、銀行で信託用の口座を開設することです。

家族信託では受託者名義の専用口座の開設が必要となります。この口座は信託口口座と呼ばれ、内容によって 3 種類(信託勘定口座、信託屋号口座、受託者個人名義口座)に分かれます。

これらのうち、本書で紹介されていた方法は受託者個人名義口座です。これは受託者(子)名義の普通口座を信託専用の口座として利用することであり、費用や時間がかかる他の 2 つと比較するとハードルは低めです。

口座開設の際には、該当の口座を信託専用口座として扱う旨を書面で残すなどのひと手間が必要ですが、多くの方にとってこの方法が第一選択となるでしょう。

なお、ここまで紹介した方法はあくまで要点のみです。家族信託は契約であり、不備があると無効になることもあります。

家族信託の支援については民間の法律事務所でも力を入れている分野のようですので、専門家のアドバイスを受けながら進めるのがよさそうです。

『家族信託 相談』と検索してみてください 

まとめ

家族信託という制度を学び、相続対策の選択肢を増やしておきましょう。相続「税」対策はお金持ちがやることですが、相続対策は多くの家庭で必要です。

本日は、書籍『日本一シンプルな相続対策 – 認知症になる前にやっておくべきカンタン手続き -』より、

  • 認知症 = 法的な死であり、資産凍結される可能性がある。親が認知症になる確率は決して低くない。
  • 家族信託について紹介。生前からの財産管理と相続をスムーズにするための方法で、認知症対策の優れた制度。
  • 家族信託の方法について要点を紹介。自己で行うと最安 6 万円程度でできるが、専門家のアドバイスのもとに進めるのが良さそう。

上記 3 点について、私なりに要約・感想を記しました。

いかがでしたか?
本記事の内容が、家族信託という選択肢を知り、親の老後の資産管理に関する疑問や不安に対して解決のヒントになれば幸いです。

個人的には、家族信託という制度について知ることができたことと、親の老後について考えるきっかけになったことが本書から得られた点でした。

ありがたいことに私の両親はまだ認知症の症状などはなく、自立した生活を送ることができています。しかし、ここで「まだまだ大丈夫」と先送りせず、健在である今だからこそ話し合う機会を設けたいと思います。

本書には本記事で紹介した内容のほかにも、遺言書作成のポイントや改定された生前贈与の解説と対策、死後の具体的な手続きについてなど、相続に関して網羅的にまとめられています。

もしこのあたりの制度について興味がある方は、ブログなどの断片的な知識ではなく、書籍などで体系的に学ぶことをオススメします。

がっちり知識武装しておきましょう!書籍もぜひ手にとってみてください

【認知症予防オススメ本の紹介】

認知症にならずに済めば、本記事でまとめた対策は不要となります。壮年期のうちからしっかりと予防しておきましょう。

認知症の発症予防には運動、口腔機能の向上、栄養、社会的交流などが重要とされています。

それぞれ関連する書籍をまずはご自身で読み、それから親にプレゼントしてみるのはいかがでしょうか。

『脳を鍛えるには運動しかない!』

運動は脳のコンディションを高める最良の方法です。認知症予防に必要なことは、クロスワードやナンプレよりも有酸素運動です。未読の方は今すぐ読みましょう!

『認知症専門医が教える! 脳の老化を止めたければ 歯を守りなさい! 』

タイトルが全てを表しています。歯を守りましょう。
「歯磨き + デンタルフロス + 洗口液 + 歯科医へ定期通院」
これが今から始めるべき歯のケアです。

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