おはようございます。
本日も前回に引き続き、書籍『わが子に伝えたい お母さんのための性教育入門』を取り上げます。
前回の記事では、性教育を始める際には、知識よりも「あなたは家族の幸せの中で迎え入れられたんだよ」というメッセージを伝えることが重要であることをまとめました。
未読の方は、コチラからどうぞ。
part 2 にあたる本記事では、子どもが性的なことに興味をもったときに親がしてあげられることや、性について伝える前に認識しておいた方がいいことについてまとめます。
子どもが性について興味を持つことは、私たち親ががそうであったように、ごく自然な事です。このときに、親が子にどう対応・声かけをするのかによって、子どもの「性」に対する認識が形成されます。また、具体的な知識を得る前にこそ作り上げたい、自分や大切な人のことを守る「心のフィルター」についても紹介したいと思います。
性教育のスペシャリストの考えについて触れてみましょう。
本書をよみ、子どもへの性教育の指針を学びましょう
愛情を注ぎ、心のフィルターをつくる『わが子に伝えたい お母さんのための性教育入門』(2)
記事の内容は、以下の通りです。
- 性に興味をもつのは健康な証
- 残念ながら、日本は性教育後進国
- 家庭で行う性教育とは
それぞれの内容についてみていきます。
性に興味をもつのは健康な証
「性教育」という言葉で、私が最初に頭に浮かんだのは、中学校の保健体育の授業です。男女で別れて、普段の授業とは少し異なった空気の中で、先生の話を聞いた記憶があります。具体的な性に関する知識を学んだのはその授業が初めてだったので、よく覚えています。
本書によると、「性」や「性教育」に関するイメージは、学校で受けた授業と、友人やメディアから得た情報に基づきます。ここで大切なことは、誰しもが「性」や「性教育」に対して、同じ内容をイメージすることはないという点です。性教育について考える際には、これを前提にする必要があります。
一方、画一したイメージではないにせよ、なんとなく性教育=性行為についての知識を教えることをイメージする方が多いのではないでしょうか。性行為はどうしても興味・関心が強いことであり、また、未だに残る「寝た子は起こすな」の風潮のもと、性教育はやましいことを教えるというネガティブなイメージが強いのかもしれません。
そもそも、なぜ人は性的なことに関心をもつのでしょうか?それは、心身ともに健康だからです。他の理由はありません。この興味・関心は、心も身体も大人に向けて健康に成長している証なのです。
自分の性について、もしくは異性について興味を持つことは、何ら恥ずかしいことではありません。性欲は、睡眠や食欲と並ぶ基本的な欲求です。むしろ、ない方が心配すべきといえます。
この当たり前にもつべき性に関する興味・関心を、大人たちが「やましいもの」とし、禁止や脅しとセットで扱ってしまうと、子どもたちの思考は「コソコソ隠れて」「バレなければ」という望ましくない方向へ向かってしまうかもしれません。
ポジティブな感情と共に伝えたいものです
残念ながら、日本は性教育後進国
日本は経済的には豊かな国であり、いわゆる先進国の一つであることは間違いありません。しかし、残念ながら、性教育に関しては他国と比較して遅れを取っているのが現状のようです。
性教育に関する国際的な指針は、『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』にて定められています。これは国連教育科学文化機関(ユネスコ)によって、各国の研究成果を踏まえ、世界保健機関(WHO)などと協力して定められた、性教育のスタンダードです。2009 年に初版が発表され、2018 年に改定されています。
このガイダンスの特徴として、年齢別の学習目標が定められていることが挙げられます。
学習内容の一例を紹介すると、
- 5-8 歳の時期に、精子と卵子の結合によって赤ちゃんができることを伝える。
- 9-12 歳の時期にコンドームの使い方を学ぶ。また、避妊に関する迷信を修正する。
など、いずれも具体的な内容です。
一方、日本では、学童期の子どもに対しては、妊娠の仕組みや、避妊・性感染症の予防方法に関する教育は、まず行われていないと思います。これが日本と世界の性教育の差のひとつです。
性教育を進めることに関しては、「あまり早い時期に性に関する情報を与えすぎると、性(行為)に目覚めてしまうのではないか」という懸念があるのも事実だと思います。しかし、直井さんは、この「寝た子は起こすな」の風潮は、もはや正しくない認識であると述べています。
直井さんによると、しかるべき情報源から得られた正しい知識やスキルは、
- 行動を慎重化させ、性感染症を発症するリスクを減らすこと
- 性犯罪の被害者・加害者になることを防ぐこと
これらの利点があります。
正しい知識は、大切な身体を性に関する犯罪や被害から守るために必要なのです。
子どもたちが適切な共育によって正しい知識・スキルを身につける必要性は、他にもあります。その 1 つが、性交開始年齢の若年化です。
本書によると、性交開始年齢は、親世代と比較してだんだん早くなっています。報告にもよりますが、性交開始年齢は、現在 60 歳代の人の21-22 歳に対して、現在 20 歳代の人は 18-19 歳です。そして、10 代で想定外の妊娠をしてしまった場合、60% が人工中絶を選択しているというデータもあります。
この背景には想定外の妊娠に対して寛容とは言い難い日本の文化・習慣の存在など、多くの要因が存在します。いずれにせよ、本来なら幸せで喜ばしく、神秘的であるべき妊娠が、心身を傷つけるものになってしまうことは残念なことです。
上記のような事実をもとに、親がしてあげられることは何か。それは、禁止や脅しではなく、性に関する正しい知識を得ることは、自分とパートナーの幸せを望むうえで必要条件であることを、子どもたちが認識できるように働きかけてあげることだと思います。
正しい知識は相手や自分の身を守ります
家庭で行う性教育とは
家庭でしかできない性教育とは、学校の先生や書籍からでは学べない、「あなた」のいのちの誕生ストーリーを伝えることです。
あなたが生まれてくれて、本当に嬉しくて幸せだということ。まずこのことを伝え続けたい。そして、あなたにはこの先の成長と未来を楽しみにしている私たち(親)がいるということ。子どもがこれらのような親の気持ちを知ったときに、子どもに「心のフィルター」が作られます。この「心のフィルター」は、本書では「情報を自ら判断できること」として紹介されていました。
例えば、アダルトビデオで描かれる性交を見たときに、「これが普通の方法」として受け入れるのではなく、「幸せないのちの誕生に繋がる性交が、こんな風に行われるはずない」と、判断できること。
アダルトビデオはフィクションです。そこに描かれているのは非日常であり、あくまで鑑賞用の作品です。このように感じ、判断できること。これが「心のフィルター」をもつということです。
また、「心のフィルター」は、自分自身や家族や友人を傷つける行為に対するブレーキにもなります。
直井さんいわく、自己肯定感が低く、心が満たされておらず「ガサガサした」状態の子ほど、愛情を確かめるために性を武器にしてしまう傾向があるそうです。
大切なわが子が悲しい思いをしなくてもすむように、幼少期はもちろん、思春期になっても親の愛情を注ぎ続けてあげたい。親から、「あなたが大切」「未来を楽しみにしている」と言われて嫌なキモチになる子はいないはず。
繰り返し繰り返し愛情を注ぎ、「心のフィルター」を作ること。これが直井さんの語る、家庭でしかできない性教育の核心部分でしょう。
一朝一夕ではなく、長い時間をかけて心のフィルターをつくりましょう。
まとめ
家庭で行う性教育は、性行為教育ではありません。愛情を絶え間なく注ぎ続けましょう。
本日は、書籍『わが子に伝えたい お母さんのための性教育入門』より
- 性的なことに興味をもつのは、心身が健康な証拠。禁止や脅しとセットで扱わないように注意したい。
- 日本の性教育は進んでいるとは言い難い。学校に任せっきりではなく、家庭でも介入が必要そう。
- 家庭で行う性教育とは、知識を身につける前に心のフィルターをつくること。「あなたが大切で、未来を楽しみにしている」という親の愛情を届けよう。
上記 3 点について、私なりに要約・感想をまとめました。
本書を読む前は、私の頭の中にある「性教育」とは、男女の性の違いや、性行為に関する知識を教えることでした。しかし、本書の内容は、いい意味で私の認識をひっくり返してくれるものでした。
よく考えれば、(偏った可能性が高い)知識を親が教える必要はありません。身を守ることに繋がる知識だからこそ、しかるべき情報源から発信された、正しい、誰にとっても公平なもの(それが学校の授業であり、教科書であり、国際セクシュアリティ教育ガイダンスだと思います)から学ぶべきなのです。親は、適切な時期に「こういうのが参考になると思うよ」と示してあげるくらいのスタンスがいいのかなと思います。
むしろ、知識以上に伝えるべきは、親しか知らない子どものいのちの誕生ストーリーです。これは教科書から学ぶものではありませんから、キチンと伝えてあげたい点です。この内容を学べただけでも、本書を読んだ甲斐がありました。
忙しい毎日で、時間に追われて忘れがちですが、子どもが生まれたときの幸福を思い出し、わが子に無償の愛を注ぎ続けていきたいですね。
ぜひ手に取ってみてください
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