おはようございます。
最近は自己啓発や自己学習のための読書が多くなっていますが、数年前までは小説しか読んでいない人間でした。
私にとっての小説は「人生を豊かにする楽しみ、エンターテイメント」です。
今回、久しぶりに小説を読みましたので、読書の楽しみを味わうことができました。
非常に楽しめた一方、現代の日本における危機管理についても考えさせられる作品でした。
本日は、『半島を出よ』という書籍の感想記事です。
本書は、第59回毎日出版文化賞及び第58回野間文芸賞を受賞しており、話題となった作品です。
先日友人から勧めてもらい、手に取る機会がありましたので感想を記します。
北朝鮮による日本侵攻のシナリオ『半島を出よ』
記事の内容は、以下の通りです。
- 膨大な資料から描かれる、圧倒的な描写を楽しむ
- もし日本が他国から侵略されたらこうなるのではないか
- 上下巻合計 1000 ページ越え!でも一気に読破できるスリル溢れる展開を楽しむ
それぞれの内容についてみていきます。
膨大な資料から描かれる、圧倒的な描写を楽しむ
本書のあらすじです。
2011 年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに 2 時間後に、約 500 名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。
幻冬舎ホームページより
作中では、北朝鮮の武装隊が福岡に上陸し、占領してしまいます。
それに対する日本政府・福岡市民の対応、および福岡に住むホームレスの若者たちを描いたフィクションとなっています。
本書の巻末には参考資料が記載されているのですが、その数 10 ページ以上。
また、脱北者へのインタビューなども重ねた上での執筆だったようで、北朝鮮国内の様子や軍隊の規律に関する描写などは圧巻です。
私は北朝鮮に対する理解をまったく持ち合わせていません。
そのため、作中で描かれていた描写が、私の中での北朝鮮および軍隊のイメージとして確立しました。
それほど緻密でインパクトのある、圧倒的な描写だったと感じます。
非常に楽しめました。
もし日本が他国から侵略されたらこうなるのではないか
作中では福岡が朝鮮軍にあれよあれよという間に占領されました。
そのことにより、九州全体への交通や物流が遮断されてしまい、結果として日本全体の経済や治安が大混乱に陥っていきます。
その様子が、大変リアルに描かれています。
特に、内閣を含む日本の中枢機関の狼狽っぷりは、まるで映像を見るかのように想像することができ、印象に残っています。
大変ありがたいことですが、日本人は平和に慣れすぎており、危機管理が足りない(いわゆる平和ボケしている)ということはたびたび指摘されています。
他国から侵略される恐れなど、おそらく 9 割以上の方が考えたことなどないと思います。
作中の福岡侵略はあまりにも見事で、まさに日本の国防意識の低さに付け込んだものだと感じました。
ロシアのウクライナ侵攻という、まさに想像もしていなかったことが現実世界で起きている時代です。
まさに日本が他国から侵略されたらこうなるのではないか、と考えずにはいられない内容でした。
文庫上下巻合計 1000 ページ越え!だがスリル溢れる展開で一気に読破
本書は上下巻の構成になっており、かなりのボリュームでした。
登場人物もかなり多く、特に福岡のホームレスや朝鮮軍の人物にいたってはみなカタカナ表記です。
とてもじゃないですが覚えきれませんでした。
この辺りが苦となる方も見えるかもしれません。
ですが、言い換えれば大変読み応えのある作品だったとも言えます。
また、封鎖される九州とその中での人々の描写の様子は、コロナ禍で行動制限を強いられる世界と似ている箇所もあり、その点も興味深く感じました。
また、終盤の福岡のホームレスたちが朝鮮軍の占領する中枢へ忍び込み、壊滅作戦を実行していく場面はスリルにあふれ、ハラハラしながら一気に読み進めることができました。
このあたりは、ビジネス書や自己啓発本にはない、小説の醍醐味ですね。
まとめ
本書はリアルよりもリアリティを感じさせる描写で、日本の危機管理意識の低さを小説という媒体で指摘したものだと思いました。
有事の際に一人の日本人としてどのようにすればよいか、考えさせられる内容でした。
こうやって好きな本を読み、情報を発信できるという環境も、平和があってこそです。
他国に侵略されてしまったら、こんな余裕があるはずがありませんからね。
まさか小説を読んで平和のありがたみに感謝するとは思ってもみませんでした。
長い、展開が遅いなどの意見もある本作品ですが、個人的には大変楽しめました。
ぜひ手に取ってみてください。
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