寿命が伸びて、何を求める?『開かれたパンドラの箱』(2)

開かれたパンドラの箱2 書籍感想

おはようございます。

本記事では、前回の記事に引き続き書籍『開かれたパンドラの箱』について触れていきます。part 1 では著者である今井教授が提言する NAD world について紹介しました。
未読の方はコチラからどうぞ。

老化 / 寿命制御に関する研究は世界各地で進行しています。書籍タイトルにある通り、本書には現時点における最前線の老化研究についての紹介が含まれていました。また、記事タイトルに記しましたが、長寿化を求める社会に対する今井教授からの重要な提言もあり、個人的には単なる知識以上に得るものがあったと感じています。以下に、本書籍で学びとなった内容を記事にまとめます。

本日は、書籍『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』(著者:今井眞一郎さん)の要約・感想記事です。

本書を読み、長寿化のその先を考えてみましょう

寿命が伸びて、何を求める?『開かれたパンドラの箱』(2)』

記事の内容は、以下の通りです。

  • 世界の老化研究最前線
  • 老化を制御する?食事で意識したいポイント
  • 長寿を成し遂げて、何を求めるのか?

それぞれの内容についてみていきます。

世界の老化研究最前線

世界の長寿 / 寿命制御に関する研究は、今井教授らが取り組んでいる NAD ブースター(NMN など)の他に、既存の糖尿病治療薬であるメトホルミン、 同じく既存の免疫抑制剤であるラパマイシン、老化細胞除去薬であるセリノティクスなど数多くあります。いずれも現在進行系で研究が進んでおり、今井教授は「役者は出揃った」と本文中で述べています。

本書では、タイトルにある通りこれら最前線の研究についても紹介がありました。

〈NAD ブースターによるサーチュインの活性化〉

著者である今井教授の研究メインテーマであり、本書で詳しく解説されています。ものすごく噛み砕いて説明すると、NAD はサーチュインの指示に従い、細胞の抗老化モードのスイッチを on にする役割を持っています。サーチュインは、「スイッチ on にしなさい」という指示を出す係です。この NAD は加齢とともに減少するため、NAD のモトである NMN を補給して、抗老化作用を高める事ができるかどうかが研究の焦点です。

2021 年に今井教授らによって、NMN の人体への投与に関する研究論文が発表され、大きな注目を浴びました。以降、様々な研究グループによる成果報告が続いています。要注目です。

〈メトホルミンによる AMPK 活性化〉

メトホルミンは古典的な糖尿病治療薬ですが、近年では心臓病や認知症、がんなどの発症リスクを低下させるという結果が報告されるようになりました。これら疾患の共通リスクは老化であるため、メトホルミンは老化そのものに効くのでは、という期待が高まっています。

メトホルミンは AMPK(AMP-activated protein kinase、AMP 活性化プロテインキナーゼ)とよばれる代謝の中心的な調整因子の一つを活性化させ、細胞のエネルギー消費抑制を介して長寿と関連している可能性があるようです。

この仮説を検証するために、2019 年からアメリカで TAME (Targeting Aging with Metformin) study が開始されています。

<ラパマイシンによる mTOR 抑制>

ラパマイシンは臓器移植の免疫抑制剤や抗がん剤、また心血管病に対する治療を目的として、医療現場で使われている免疫抑制薬です。このラパマイシンは生体内のターゲット分子である哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mammalian target of rapamycin: mTOR)という蛋白質に対して抑制的に作用し、細胞の成長や増殖をコントロールします。動物実験では寿命延伸効果が数多く報告されています。

これらはいずれも現在進行系の調査です。成果発表を待ちましょう。

どんな結果になるか、楽しみですね!

老化を制御する?食事で意識したいポイント

ここまでは老化 / 寿命制御の研究についての解説が続いていました。しかし、終盤では少し雰囲気が変わり、ここまでの老化研究の成果を、食事や運動などの生活習慣にどのように反映させるかについて述べられていました。とくに食事についてのパートでは、今井教授が研究成果を踏まえてご自身の生活に反映させている内容も紹介されていました。ここまで難解な内容が並んでいた分、グッと身近に感じられるパートでした。

NAD の合成あるいは活性状態は、一日の中で変動します(サーカディアンリズム)。NAD の活動は、ヒトの場合は午前中に上昇することが明らかになっており、反対に夜間は低下します。これをもとに今井教授は、活動の開始にあわせ、朝食をガッツリ食べるそうです。本文中には、とある日の朝食メニューの写真が載せてありました。ご飯・味噌汁、サラダとフルーツのみではなく、ステーキがドンと写っていました。朝から…と思う方もいるでしょうが、今井教授の食生活は、朝 → 昼 → 夕とボリュームを落としていき、夜はワインとチーズ・ナッツを少々という内容のようです。「夜もガッツリ、さらに朝からも」というわけではないので、全く問題ないとのことです。

西洋のことわざには、「朝は王様のように、昼は貴族のように、夜は貧者のように食べよ」とあります。朝食をたっぷり食べるのは、自律神経の活動を整えるという点でも理にかなっています。本書の内容やことわざを参考に、健康的な食生活を目指しましょう。

20 代の朝食欠食率は 20-30% だそうです。朝ごはんガッツリ食べてますか?

長寿を成し遂げて、何を求めるのか?

この問いかけは本書の最終章にありました。

老化 / 寿命制御の研究はまさに日進月歩であり、大きなビジネスにもなりつつあります。健康・長寿は人類普遍の願いですが、何のためにそれを成し遂げたいのかを真剣に考える必要があると今井教授は述べていました。これは、30 年以上研究を続けてこられた方だからこその境地であると思いましたし、読んでいてハッとさせられた箇所でした。

元気な高齢者が増えることは、高齢化がドンドンと進む日本や世界にとって喜ばしいことですが、一方で、見方によっては若い人たちの活躍の場を奪うことにも繋がりかねません。一部の既得権益者が、さらなる利得のために長寿の恩恵を受けるのではなく、重ねてきた経験や知恵を若い世代に自ら示していくことが望ましいだろうと今井教授は述べています。そして、「死ぬべきとき」まで可能な限り自立した生活を送り、幸せな人生を過ごすこと。これは数ある答えのなかの一つだと思います。

テクノロジーや科学技術発展への投資が不可欠なのはもちろんですが、それを扱う人間に対しても、同等かそれ以上に投資をして、知識や考え方、謙虚さや道徳心を update しなければなりません。自分本位ではなく謙虚さを持って、新しい時代の様々な恩恵を受けたいですね。

柔軟に、謙虚に…老害になってはいけません!

まとめ

長寿化のための様々な研究が、世界で進められています。研究は研究者の仕事です。私達はその結果をもとに、どう生きたいのか考えてみましょう。

本日は、書籍『開かれたパンドラの箱 老化・寿命研究の最前線』より、

  • 世界の老化研究について紹介。いずれも現在進行系。成果報告に期待。
  • NAD のサーカディアンリズムに合わせると、食事は朝にガッツリ摂取がオススメ。
  • 長寿化を成し遂げたとき、何を求めるのか?一人一人が考えるべき。

上記 3 点について、私なりに要約・感想を記しました。

本書を読み、NAD や NMN などの長寿研究に関するキーワードがスッキリ理解できました。本書は日本人研究者による書籍なので文章も読みやすく、多くの学びを得ることができました。特に終盤の問いかけは、これまで長寿関連の本を読むだけの自分では考えの及ばなかった点であり、この問いかけに出会えただけでも本書を読んだ甲斐があったと感じました。

これからも今井教授を始めとした長寿関連の研究成果をしっかりキャッチして、時代の潮流に乗り遅れないようにしていきたいと思います。

ぜひ手に取ってみてください

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