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おはようございます。
皆さんには不安や心配事、ストレスはありませんか?もしあるとしたら、それらを上手くコントロールできているでしょうか。
目まぐるしく変化を続ける現代社会において、人生になんらかの生きづらさを感じ、安らかに日々を過ごせない人は、世界的に増加しているようです。日本でも、6 割以上の人がストレスを感じているとするデータがあります。
このように、多くの人が不安や心配事、生きづらさを感じています。そんな悩みについて、本記事で紹介する書籍から学べる内容が、解決のヒントになるかもしれません。
なぜなら、本書には「苦しみ」がどのような現象であるかについて、星の数ほどの神経 / 脳科学文献から得られたデータを基に、端的にまとめられているからです。
本記事では書籍の内容を中心に、
「苦しみとはなにか」
「第二の矢こそ真の苦しみ」
「降伏すること」
上記 3 点について紹介します。
本記事を読み終える頃には、私たちが抱える「苦しみ」について、新たな視点で考えられるようになると思います。また、紹介する書籍にも興味を持って頂けると嬉しいです。
本日は、書籍『無(最高の状態)』(著者:鈴木祐さん)の要約・感想記事です。
本書を読み、苦しみに対する理解を深めましょう
『無(最高の状態)』要約 苦しみからの解放をめざそう
苦しみとはニーズが満たされない状態
そもそも、苦しみとはどのように定義されるのでしょうか。本書では、苦しみとは「様々なニーズが満たされない状態」としてまとめられています。
苦しみは怒りや不安、恐怖など、様々な感情によって表されます。これらには、私たちに不足を知らせるメッセンジャーとしての役割があります。
例えば、
- 怒り:自分にとって重要な境界が破られたことを知らせる
- 不安:よくないものが近づいていることを知らせる
- 恐怖:危険なものがすぐそばに存在する可能性を知らせる
などです。
もしこれらの感情がなければ、私たちは大切なものを取り戻そうとしなくなり、危険察知もできなくなります。
極端なことを言えば、苦しみを引き起こす様々な感情は生存に不可欠な要素です。そのため、これらの感情は祖先の時代から途切れることなく受け継がれていますし、私たちは生まれながらにして、喜びよりも苦しみの方が記憶に強く残りやすい設定(ネガティビティバイアス)を持っているのです。
こう考えると、苦しみは歓迎されるものではありませんが、絶対的に悪いものでもなさそうです。
そうは言っても、必要以上に苦しみを味わいたくないですよね。どうしたらいいでしょうか。
真の苦しみは、「二の矢」が刺さるかどうか
生存に必要な苦しみを「一の矢」とすると、こじらせてしまった真の苦しみは、そのあとにやってくる「二の矢」が刺さるかどうかで決まります。
本書における二の矢とは、「なにか嫌なことによって生じた苦しみ(一の矢)によって、さらにネガティブなことを考えて苦しむこと」と解説されていました。そして、この二の矢こそ、私たちを悩ませる「真の苦しみ」のカギを握っています。
一の矢の苦しみは何週間も持続しない
まず、一の矢の苦しみはいつまでも残るものではなく、数秒から数日で消え去ります。
これはどういうことかというと、怒りや不安、恐怖などの感情は、脳の辺縁系(島皮質、帯状回、梨状葉、海馬、皮質下の扁桃体、中隔核、視床下部などをふくめた総称)で発生するものであり、この部位の働きは、より高次の機能を有する前頭葉によって制御されます。
そして、前頭葉が辺縁系を制御するために必要な時間はほんの数秒です。例えば、怒りをコントロールするためには「6 秒待つこと」が有名ですが、これはまさにこのことを表しています。
一方、悲しみが持続するのは 120 時間程度とされています。悲しみの持続は怒りと比較するととても長く感じますが、何週間も持続するものではないともいえます。
二の矢は、過去や未来について考えるために生まれる
また、二の矢による苦しみは、人間が過去や未来ついて考えることができるために生まれます。
私たちが生きていくなかで、一の矢による苦しみは避けられません。ただしそれだけで済めば、その傷口は時間とともに消えてなくなります。
しかし、今この瞬間の苦しみを過去や未来と結びつけてネガティブに考え出してしまうと、さらに傷口は広がり、それが新たな苦しみを生むという悪循環を作ってしまいます。
これは、高次の脳機能を有する人間に特有の現象といえます。人間以外の哺乳類でも苦しみの感情を表すことはありますが、苦しみをこじらせ、精神疾患をわずらう野生の生き物はいないそうです。
本書ではこの例として、京都大学霊長類研究所で飼育されていたチンパンジーのレオについて紹介されていました。
レオはある日、髄膜炎のため首から下が動かせなくなり、寝たきりとなりました。人間であればメンタルが崩壊し、うつ状態になってもおかしくない状態です。
そんななかで、レオは空腹や痛みを訴えることはあっても、それ以上の苦しみを表すことはありませんでした。それどころか時折笑顔を見せる余裕すらあり、尿検査で得られるストレスホルモンは、なんと正常値を保っていたようです。
一方で、もし人間が同じ身体状態になったら、どのように感じるでしょうか。おそらく、手足が動かないという一の矢に苦しむだけでなく、
「なんで私だけ…」
「この先どうするんだ…」
「家族はどうすれば…」
のような二の矢(場合によっては三、四の矢)が刺さり苦しむことは、容易に想像できます。
このように、今ある苦しみについて考え、それが新たな苦しみを生み、またそれについて考えてしまうことを反芻思考といいます。
この反芻思考は不安や抑うつ、さらには心臓病や脳卒中の発症との関連が明らかにされているため、可能であればコントロールしたいところです。実際に精神科では抑うつ症状がひどい場合、治療の対象になることがあります。
真の苦しみは、二の矢が刺さるかどうかで決まることを認識しておきましょう
苦しみ=痛み×抵抗を知り、積極的に降伏する
それでは、二の矢が刺さらないようにするために、私たちにできることは何があるでしょうか。このカギを握るのは、「苦しみ=痛み×抵抗」を知り、積極的に現実に対して降伏することです。
降伏というコトバには良いイメージがない方が多いと思います。しかし本書では、降伏することは苦しみをコントロールするための積極的な態度であると紹介されていました。
そもそも抵抗とは自己防衛反応のひとつであり、生まれつき備わっている必須機能です。そのため、これを 0 にすることはできませんが、一方で、必要以上の抵抗は苦しみを大きくします。病気への抵抗力である免疫でさえ、暴走すれば自己を傷つける病気(自己免疫疾患)になるのです。
また、現代社会は「人生を変えよう!」や「好きなことをしよう!」など、折にふれて現状への抵抗を促します。そのため、日々の暮らしのなかで降伏の利点を感じることは難しいでしょう。
しかし、「二の矢」は現実への抵抗という行為で生まれる苦しみです。そのため、「積極的な降伏」はそれを避ける有効な方法になりえるかもしれません。
苦しみに降伏すること(抵抗せず、受け入れること)の効果を示したこんな研究報告があります。
この研究は 2014 年に発表されたもので、健康な人を対象とし、被験者にはたいへん苦しい高強度のトレーニングを受けてもらいました。その際、被験者に対して「運動の苦しみを受け入れるように」指示したところ、運動の主観的な辛さが 55% 低下し、運動の持続時間は 15% 増加したというものです。
この結果から分かることは、苦しみに対しては降伏することにより、その程度が軽くなる可能性があるということです。
さらに抵抗を小さくするためのコツは、「やらされる」のではなく「やる」ことです。これは多くの方にとってイメージしやすいことだと思います。
「勉強しなさい!」と言われて気分よく勉強できる人はいません。注射は「痛いのは嫌だな」と思うから苦しいのです。極端な例を挙げると、滝行は「水が冷たくていやだな」「なんでこんなことを…」と思うから苦行になるのです。
直面している現実を認め、抵抗を捨て、正面から向き合うという姿勢をもつこと。これが苦しみを小さくするポイントです。
「本当の敵は自分の内側にいる」という言葉もあります。苦しみに対して、積極的に降伏しましょう。
まとめ
苦しみ = 痛み×抵抗を理解し、現実に対して積極的に降伏することにより、二の矢が刺さらないようにすることができます。生きづらい世の中で、穏やかな日々を過ごしたいですね。
本日は、書籍『無(最高の状態)』より、
- 苦しみは私たちに不足を知らせるメッセンジャー。それ自体は生きるために必要なもの。
- 真の苦しみは、二の矢によってもたらされる。苦しみが苦しみを呼ぶ状態で、抑うつや病気の発症リスクを高めてしまう。
- 二の矢が刺さらないようにするよい方法は、積極的に降伏すること。直面する現実を受け入れよう。
上記 3 点について、私なりに要約・感想を記しました。
いかがでしたか?
本記事の内容が、私たちに襲いかかる苦しみに対して新しい考え方のヒントとなれば幸いです。
個人的には、苦しみ = 痛み×抵抗という表現が本書で得た一番の学びでした。身にふりかかる苦しみに対してなんでも降伏すればいいとは思いませんが、不要な抵抗をなるべく小さくして、不要な苦しみは避けて生きていきたいと思いました。
本書には、本記事で紹介した内容の他に、虚構:自己とは作られた物語、悪法:あなたの苦しみを左右する 18 のパターン、無我:思考を止めてみるなど、「苦しみ」の足かせを外すための考え方や方法論が述べられています。
著者は、『本書で紹介している技術は大半が神経科学や脳科学のデータに基づいており、実践すれば多くの人に恩恵があるでしょう』と述べていますし、私もそうだと感じました。
本記事や本書の内容が、苦しみについて改めて考えてみる機会となれば幸いです。
二の矢が刺さらないように生きていきたいですね。書籍もぜひ手にとってみてください!
【よりよく生きるためのヒントが得られる書籍の紹介】
『サーチ・インサイド・ユアセルフ』
Google で発案された、マインドフルネスをベースとした能力開発プログラムについて書かれた書籍です。
過去や未来ではなく現在に焦点を当てるというマインドフルネスの考えは、二の矢が刺さらないようにするために有用でしょう。
『限りある時間の使い方』
もし時間に苦しめられているのであれば、こちらの書籍がオススメです。苦しみから解放されるカギは、時間に対しても降伏することでした。
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