『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』要約 何気ない一言が子どもを壊す

子どもを呪う 書籍感想

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おはようございます。

みなさんは子どもへの声掛けついて「気を付けた方がいいものはあるかな」と迷ったり、あるいは「ちょっと口うるさくしすぎたかな」と反省することはないでしょうか。

このような子どもにかける言葉に関する悩みや疑問に対しては、本書から学べる内容が参考になるかもしれません。

なぜなら本書には、一万人以上の犯罪者や非行少年 / 少女の心理分析を行った著者によって、親がかけてしまいがちな言葉が子に与える影響について、犯罪心理学の観点からわかりやすく解説されているからです。

本記事では書籍の内容を中心に、

  1. 法務教官が感じる保護者の問題
  2. 子どもを「破壊」するさまざまな言葉
  3. 親子・親同士で常に話し合うことが大切

上記 3 点について、私なりに要約・感想を記したいと思います。

本記事を読み終わるころには、子どもにかける言葉について改めて考えるようになると思います。また、紹介する書籍に興味を持ってもらえると嬉しいです。

著者は TV 出演多数の有名人です。本書が初の書籍のようですが、一見の価値ありです。

本日は、書籍『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』(著者:出口保行さん)の要約・感想記事です。

本書を読み、何気なくかけている子どもへの言葉を振り返ってみましょう

『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』要約 何気ない一言が子どもを壊す

法務教官が感じる保護者の問題

著者について紹介

著者の出口保行さんは国家公務員上級心理職として法務省に入省し、全国の少年鑑別所、刑務所、拘置所で犯罪者を心理学的に分析する資質鑑別に従事したという経験をお持ちのようです。その後、2013 年から東京未来大学こども心理学部教授に着任され、現在に至ります。

またメディアへの露出も多く、フジテレビ「全力!脱力タイムズ」にはレギュラー出演されています。

本書では前述した法務教官としての経験から、非行少年 / 少女の親の言動に焦点を当て、その問題点を指摘しています。

親の責任感の欠如が問題

法務教官とは法務省に所属し、少年院や少年鑑別所に勤務しています。主な職務内容は非行を犯した少年 / 少女が立ち直れるように教育したり、相談、助言などを行うことです。法務教官は、言わば「少年院の先生」であり、日々現場で子どもたちと接しています。

本書では、実は法務教官は少年 / 少女たちだけではなく、その保護者に対しても問題を感じているという興味深いデータが示されていました。

平成 17 年度版の犯罪白書に「法務教官が感じる保護者の問題」を調査したデータがあります。それによると、現場の法務教官は非行少年の保護者に対して、

  1. 子の行動に対する責任感がない(回答率 62.5%)
  2. 子の言いなりになっている(50.2%)
  3. 子の行動に無関心(49.1%)

という問題点を感じているようです。

そして著者は、「このように子どもの言動に対する責任感が欠如している親のもとでは、子どもは社会のルールを教えてもらうことはなく、また、親を含めた周囲の大人を信頼することは難しいだろう」と述べています。

やっかいなのは親

法務教官は非行少年 / 少女たちとの面接や行動観察を通して、子どもたちの更生の指針を立てます。その甲斐もあり、少年院を出た後の再発率は約 15-20% 程度です(これは諸外国と比較すると低いそうです)。

著者はこの再犯率の低さから「たとえ罪を犯しても、子どもは変わることができる」と述べていました。

しかし一方で、それ以上にやっかいなのは親です。大人は子どもほど簡単に変わることはできません。

それは、長い時間とたくさんの経験によって自分の価値観を築いているためです。また、人間には確証バイアス(自分にとって都合のよい情報ばかりを集めてしまう)や現状維持バイアスという無意識のフィルターもかかっています。

世の中に自己変革を促すセミナーや書籍がたくさんあるのは、裏を返せば「変わること」の難しさを象徴しているともいえるでしょう。

たとえ子どもに更生の兆しがみえたとしても、その保護者が変わらなければその意志は台無しになってしまいます。その意味で、親の方がやっかいなのです。

親自身の態度を振り返ってみよう

子どもに対して無責任な態度になっていないか、あるいは親自身が現状に固執していないか、時々でいいので省みる機会をもちましょう。親が子の成長や更生の妨げになっていないでしょうか?

毒親になってはいけません…

子どもを「破壊」するさまざまな言葉

本書では著者の経験をもとに、親が「何気なく」かけてしまいがちだが、子どもにとっては「呪い」になる可能性がある言葉が紹介されていました。

書籍で紹介されていた言葉のうち、本記事では「みんなと仲良く」「頑張りなさい」「勉強しなさい」について触れていきます。

「みんなと仲良く」が個性を破壊する

日本には周囲との調和を重んじる文化があり、「仲良くしなさい」は親が子どもに対してよく口にする一言だと思います。しかし著者は、この言葉は子どもの個性を破壊する可能性があると述べています。

個性を抑えることではない

みんなと仲良くすることは、周囲の反応を伺いながら生活することを意味します。そして、それがあまり過剰になると自分の主張や個性を抑え、周囲の反応を第一優先する状態になり、結果として自己決定する力が弱くなってしまいます。

「みんなと仲良く」が悪い考えではないと思いますが、「個性を抑えろ」というメッセージとして伝わっていないか気を付けた方がよさそうです。

仲良くできないから困ってる可能性も

「みんなと仲良くしなさい」と言われる子は、そもそも仲良くできないから困っているのかもしれません。問題とみられるような行動をとっているのは、子どもなりに考えた対応策である可能性があります。

そんな子に対して漠然と「仲良くしなさい」と言うだけでは、なにも解決しません。仲良くできないならどうしたらよいのか、その子と一緒に考える姿勢で話を聞いてみましょう。

「みんなと」仲良くしなくてもいい

あるいは、考え方をガラッと変えてみるのも一つの手かもしれません。

そもそも合わない人に合わせる必要もなければ、「みんな」と仲良くする必要もないのです。自分にとって最適で充実感を得られる友人の数は、当然ながら人によって異なります。

「頑張りなさい」が意欲を破壊する

この言葉も何気なくかけてしまいがちな言葉だと思います。

親としてはこの一言でやる気のスイッチを on にしてほしいところですが、残念ながら「頑張りなさい」では子どものやる気や意欲を高めることはできません。

もしそうしたいのであれば、取り組んでいる姿勢やプロセスを褒めましょう。

意欲を持っていることを褒める

人は意欲を持っていることを褒められると、より一層意欲が高まることが知られています。子どもに対しては「やる気に満ち溢れてるね」「毎日欠かさず取り組んでるね」のように、目標に向かって取り組む姿勢や態度に着目して、それらを言語化してあげましょう。

頑張れないのなら、その理由を一緒に考える

また、漫然とした「頑張れ」は具体性に欠けているため、何をどうしたらよいか分かっていない時には効果がありません。そんな時は親が一緒になって目標を立ててあげましょう。

あるいは、子どもは「頑張りたいけど頑張れない」状態なのかもしれません。そんな時は子どもに寄り添い「頑張れない理由」を一緒に見つけてあげることも必要になります。

「勉強しなさい」が信頼関係を破壊する

3 つめも、多くの親がかける言葉でしょう(しかも厳しい口調で)。私もつい口にしてしまいます。

「勉強しなさい」は、親 → 子どもへの一方通行の期待を表す言葉です。そのため、この言葉を多用する親は子どもの気持ちを聞いておらず、本人の努力を認めていない可能性があり、結果として親子の信頼関係がうまく築けなくなってしまいます。

青年期特有の視野狭窄を理解しておく

勉強のできる「いい子」が重罪を犯し、社会的に大きなインパクトを与えることは度々あります。2022 年の東大前刺傷事件を起こした少年は当時有名進学校に在籍しており、世間一般からみれば「勉強のできる子」でした。

なぜ、このような痛ましい事件が起きてしまったのでしょうか。

この理由の理解を助けるものとして、青年期の心理的視野狭窄とよばれる状態があります。これは何か一つの考えにとらわれてしまい、周囲の事柄に考えが及ばなくなることを指すもので、この時期特有のものです。

もしかしたら事件を起こした少年は、当時何らかの理由でこの状態に陥ってたのかもしれません。彼からしてみれば、ごく限られた周囲しか見ることができず、その中で自分自身の存在意義に疑問を感じ、将来に希望を持てなくなってしまい、結果として犯行に及んでしまったのかもしれません。

そんな子どもたちに対して親を含む周囲の大人できることは、「人生にはたくさんの選択肢がある」ことを教えることです。狭くなりがちな子どもの視野を広げるような関りを持つようにしましょう。

競争に負けたら終わりではない

人生は「競争に負けたら終わり」ではありません。子どもに対しては、競争は頑張るための仕組みにすぎないこと、結果はどうであれ「あなた」という存在自体に価値があり、それはずっと尊重されるということを伝えていきましょう。

3 つの言葉、どれも何気なくかけてしまいがちですね。
気をつけないと…

親子・親同士で常に話し合うことが大切

本書の終盤には、良好な家族関係を築くためには常に話し合うことが大切だという著者の考えが述べられていました。その重要性は親子の間だけでなく、親同士にもいえます。

子どもの「助けて」はもう深刻

子どもと話す機会をたくさん設けましょう。もし子どもから助けを求められたときには、事態はもうすでに深刻になっている可能性があります。

著者によると、子どもは思っていることの 1% も口に出しません。そのため、常日ごろから子どもの様子を観察し、ささいなことで構わないので会話する機会をもちましょう。芽は小さいうちに摘み取ることが肝心です。

親同士で教育方針を話し合っておく

本書では親が子どもにかける言葉とその影響について主に述べられていましたが、それと同じくらい重要なことが親同士の考え方を話し合っておくことです。

保護者は子育て方針の不一致を反省している

先に紹介した保護者に焦点をあてたデータには、もう一つ興味深いものが紹介されていました。それは「非行を犯した少年 / 少女の保護者が反省していること」であり、その結果は、

  1. 子どもに口うるさかったこと
  2. 夫婦の子育ての方針が一致していなかったこと

なのだそうです。

そして、著者はとくに 2 について「方針が一致しなくてもよいから、親同士で話し、合意を取ることを大切にしてほしい」と述べています。

価値観は一人ひとり違う。話し合って歩み寄ろう

子育ての価値観は自分自身が育った環境やこれまでの人生で経験に影響されるため、一人ひとり異なって当然です。大切なのは、違いを認め互いに歩み寄ることではないでしょうか。

また、子育てに悩まない親はいません。むしろ、それぞれが子どもや家族に対して真摯に向き合うからこそ悩みが生まれるのであって、それ自体はとても尊いことです。

修正を恐れない。ただし黙って変えないこと

子育てに正解はなく、また不正解もありません。親だって人間ですから、時には間違えることもあると思います。それに気がついたときには、恐れずに修正すればよいのです。

ただし、修正するときには子どもやパートナーに黙って変えないようにしましょう。もしそうしてしまうと、信頼を失くしてしまいます。

常に話し合い、合意を取ることが最重要ですね

まとめ

親がかける何気ない一言が、子どもにとっては「呪いの言葉」になってしまうかもしれません。子どもへの言葉や態度が押しつけになっていないか、一度振り返ってみるのはいかがでしょうか。

本日は、書籍『犯罪心理学者が教える子どもを呪う言葉・救う言葉』より、

  • 法務教官が考える親の問題を紹介。それは子どもに対する責任感が欠如していることと、親の方が変わることが難しくやっかいであること。
  • 子どもを呪うかもしれない言葉を紹介。「みんなと仲良く」が個性を、「頑張りなさい」が意欲を、「勉強しなさい」が信頼関係を破壊してしまうかも。
  • 親子間・夫婦間で話し合う重要性を紹介。互いに歩み寄り、子育て方針の修正を恐れないようにしよう。ただし、修正するときは黙って変えないこと。

上記 3 点について、私なりに要約・感想を記しました。

いかがでしたか?

本記事の内容が、子どもにかける言葉や接する態度を振り返る機会になったり、夫婦間の子育て方針について考える機会になれば幸いです。

個人的には、子どもにかける言葉を改めて意識するようになったこと、子育ての価値観をパートナーと話し合い歩み寄る大切さを学べたことが、本書から得られた内容でした。

本書には、記事で紹介した内容以外にも、「気をつけて」「早くしなさい」「何度言ったら分かるの」といった言葉が子どもに及ぼす影響について、事例を交えながら解説されていました。

いずれも著者の豊富な経験から語られている内容であり、参考になるものでした。

言葉は子どもを呪うものにもなれば、一方で救うものにもなります。かけがえのないわが子ですから、かける言葉や接する態度について改めて考えて、子どもが前向きで真っ直ぐに育ってくれるようにサポートしていきたいですね。

子どもへの言葉や態度について考えてみましょう。
書籍もぜひ手にとってみてください。

【子どもへ接する態度が学べるオススメ書籍の紹介】

『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』

あれやこれやと口を出さずに、認め、見守り、待つ姿勢が子どもを伸ばします。待つことが苦手という人も多いと思いますが、親としてぜひ取り入れたい姿勢です。

『憎しみの残らないきょうだいゲンカの対処法』

きょうだいゲンカに遭遇した時に親がとるべき態度を学べます。
「仲良くしなさい!」ではなく、子どもと話し、気持ちを聞き出すことが重要です。20 年以上前に出版された書籍ですが、現代でも参考になります。

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